金融商品会計とマイルスデビス

金融商品会計とマイルスデビス

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   数年前のこと、あっぱれ高校に入学する娘とアイパッドを買いに原宿は表参道に出かけた。まあ近いので車で出かけて路上のパーキングメータに止めアップルストアーに入り、大枚をはたいてアイパッドを買ったのだが、あとで、当方が頭にくるようなことがあり、もったいないことに、それを僕が壊したのである。まるで昭和の暴君である。さて、何に怒ったのかは覚えていないけれど、馬鹿らしいことに壊したことは覚えている。

  時がたって、娘と話がこれに及んだ時、彼女が言うには、小じゃれた表参道の中で、お父さんだけが浮いていた、おしゃれじゃない、恥ずかしかった、と言うのである。何を言うか、と怒るところなのだが、おや、いや、一理あるかとも思った。昔から「おしゃれ」とは無縁な生活を送ってきたからね。

  

  おしゃれ、は英語ではFashionableというのだろうか。お洒落、という用語には当方トンと縁がないが、洒落(しゃれ)ということであれば、これは結構、重要なことと思っていて(この近頃の言いまわし方、本当は嫌のだ)、僕の頭の中では、まず、シャボン玉ホリデー、次に獅子文六とくる。文六さんの小説は、何ともしゃれた感じで大好きだった。死ぬ前に牡丹に一礼したという随筆は、小林秀雄がけだし明文と褒めていたかと思う。そして、文六さんの小説に「娘と私」という名作があるんだよ、といってもバカ娘には伝わるまい。

  

   洒落ている、といえば次に、ご存知マイルスの『Someday My Prince Will Come』。学生のころから好きだったが、最近またよく聞いている。ポール・チェンバースのFだけの音が単調に続いてご機嫌なウイントン・ケリーのピアノ和音、そしてマイルスの知られた主旋律をいじったミュートが劇的に登場、これが洒落ている。その他いろいろあるが、とにかく秀逸はコルトレーン。洒落ていて深い。あのうねるような、そしてちょっとアラビックなアドリブの旋律は彼が予め考えたのだろうか、『創造的』という概念は、なるほどあるものだなあ。

  

  必要があって、国際財務報告基準の9号の中、金融商品の減損会計を読んでみるが、さっぱりである。発生損失モデルから予想信用損失モデルになって、減損を認識するのが早くなったという。簡単に言えば「予想信用損失に対する損失引当金を認識しなければならないAn entity shall recognise a loss allowance for expected credit losses (IFRS No.9 5.5.1)」。

  分かったような分からないような気分である。引当金という概念が出てくるのだから、所詮見積りなのである。であれば、損失の認識時期が早まったというが、さて、本当に認識の時期の問題なのか、あるいは測定の問題なのか、答えは依然として見つからない。

  国際財務報告基準を作る主要メンバー国は、モノづくりよりもサービスや金融に熱心であると聞く。そこで金融商品会計こそはメインテーマなのだろうが、何十年も経て、2014年に目出度く基準が完成したという。しかし、ヘッジ会計はまだあるわけで、本当のところ完成はしていない。そしてこの分かりにくさを見るにつけ、創造的な産物とはどうしても思えないのである。

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