タックス・ニュース 第218号 2015年2月号

タックス・ニュース 第218号 2015年2月号

トピックス

1. VAT非課税事業に関して発行した税額票の問題について

  • こと納税に関しては、分からなければとりあえず払っておけば、まず問題はないであろう、と考えるのは、保守的な見地からすれば、至極全うといえます。
  • ところが、VATに関しては必ずしもそういうことにはなりません。
  • VAT非課税事業の売上について、事業者が税額票(タックス・インボイス)を発行していた場合、仮に当該事業者が顧客から回収した売上税額を税務当局に納税していたとしても、その後大変大きな問題となることがあります。
  • 歳入法典第82/5(5)条は、権限のない者が発行した税額票に係る仕入税額の控除ないし還付を禁止しているためです。
  • これには若干説明が必要です。VAT非課税事業である以上、事業者は当該事業に関する物品販売ないし役務提供の対価について顧客からVATを徴収する権利も義務もなく、税額票も発行する権利を有していません(歳入法典第86条)。従って、VAT非課税事業について税額票を発行した場合、当該税額票はそれを発行する権限のない者により発行された税額票に該当するというわけです。
  • そういった理由で、本来VAT課税事業でないのに税額票を顧客に発行してしまうと、顧客のほうに、金額やその取引の期間によっては、多額のVATが追徴課税されるおそれがあります。よく問題となるのは、不動産賃貸かかる役務提供、タイ国内輸送に係る役務提供、金融取引です。
  • 尚、もし、顧客がそのよう追徴課税を受けたら、違法な税額票を発行した会社が顧客に弁償して、その後、歳入局から自分が納税したVATの還付を受ければいいではないか、と考える方もいると思います。しかしながら、歳入法典第86/13条並びに88/1条は、違法な税額票を発行した会社に対して、当該違法な税額票に記載したVATの納税義務を課すとともに歳入法典89条により2倍の加算税を賦課決定できる権限を税務調査官に付与していますから、還付を認めてもらうのは現行制度上はまず難しいといっていいでしょう。
  • これは結局、違法な税額票を発行したことを理由に、一方では歳入局の損失を回復させるために仕入税額の禁止を根拠に当該税額票の受取人からVATを追徴課税し、他方で、違法な税額票の発行者にも当該税金の納税を求めることができるので、結果として、当局は損失を回復したうえさらに同額の税金を取得することを認めることになります。この点、まだ先例として裁判で争われた事案がなく、実際の実務でも違法な税額票の受取人と発行者両方へ課税を行う課税執行がされているので、ご注意ください。

2. 長期ビザ情報のアップデート

  • 昨年の軍事クデターの後成立したプラユット政権の下、長期ビザの取扱についていくつか変更されていますので、主な点を振り返ってみたいと思います。
  1. オーバーステイのペナルティー

    これまでオーバーステイのペナルティーは、1日500バーツ最高2万バーツの罰金を支払えばよかったのですが、2014年8月依頼、オーバーステイの日数により、一定期間タイへの入国が禁止されます。ビザ更新時に新しいペナルティーについて確認した書類に署名した方もいらっしゃると思います。

    禁止期間は以下の通りです。

    自首した場合
    オーバーステイの日数 入国禁止期間
    90日超 1年
    1年超 3年
    3年超 5年
    5年超 10年
    逮捕された場合
    オーバーステイの日数 入国禁止期間
    1年以下 5年
    1年超 10年
  2. ノービザの延長

    従来、ノービザの延長はできず、タイを出国して再入国するほかありませんでした。ところが、新政権の政策により昨年8月より移民局で30日間延長することができるようになりました。その代り、新政権は、ノービザの外国人が上記の通りタイに再入国した場合、観光ビザやビジネスビザがないとタイへの入国を拒否することを発表しています。

  3. ワン・ストップセンターでの社会保険料及び税務申告書類の提出について

    これまで、移民局では、ビザ更新の際に、社会保険料申告書(SorPorSor1-10)、源泉徴収税申告書(PND1)、付加価値税申告書(PP30)、個人所得税確定申告書(PND91)については、提出先の社会保険事務所又は歳入局事務所が署名した謄本原本の提出が要求されていました。一方、ワン・ストップ・センターでは、各当局が署名した書類の写しを会社の取締役が署名したものを提出すればよく、各外国人毎に当局より上記の書類を取り寄せる必要がありませんでした。

    この点について、今後は、ワン・スットプ・センターでも、各当局が署名した謄本原本の提出が原則として必要とされました。但し、社会保険料申告書については、それがない正当な理由がある場合に限り説明文を添付すれば提出が不要です。

    社会保険料申告書や各種税務申告書の謄本を取得する際、申告した当日であれば、即日その場で謄本を発行してくれますが、後日謄本の発行を依頼した場合、3日ないし15日程度かかると言われる場合があります。従って、これら書類の準備は事前に行っておく必要がありますので、ご注意ください。

    尚、BOI恩典を利用して長期ビザを取得している方については、上記書類の提出は不要です。

最新法令一覧表

重要法令・ルーリング全訳・解説

投資委員会布告ポー2/2558

投資奨励事業における単純労働に従事する外国人労働者の雇用の緩和

仏暦2558年勅令(第581号)

金融機関に係る債務再編に対する所得税、付加価値税、特定事業税及 特定事業税及び印紙税の免税措置

財務省令第306号(仏暦2557年)

不良債権の貸倒償却について

印紙税に関する歳入局長通達第54条

一定の文書について、印紙を添付する代わりに現金で印紙税を納付する方法

付加価値税に関する歳入局長通達第205号

歳入法典第77/1条 (10)(c)に基づく役務提供とみなされない行為に関する規定

歳入局通達トー・ポー234/2558号

歳入局長の代理として命令及び行為する権限の歳入局副長又は歳入局副長代理への授与

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