タックス・ニュース 第222号 2015年6月号

タックス・ニュース 第222号 2015年6月号

トピックス

(1) 相続税法案国会通過

  • 相続法案がタイ国会で可決されました。相続税の対象となる免税点は草案段階では5千万バーツでしたが、1億バーツまで引き上げられました。これの子供(この範囲はまだ不明)には5%、その他10%の税率で相続税が科されるとのことです。
  • 法案は、官報掲載後180日以内に発行するようですので、遅くとも来年度には施行される見込みです。政府はこれで30億バーツの税収が毎年見込めると予想しているようです。
  • タイの相続税は、タイで就労する、又は暮らす日本人にも影響する可能性があります。そこをちょっと考えてみたいと思います。
  • 最近、バンコクのコンドミニアムが高騰していると、仄聞します。そして、日本人駐在員の中でも、資産運用のため、バンコクのコンドミニアムを購入する方がいるとも聞きます。
  • 一方、日本では、お金が(日本から見ての)海外へ流出していく傾向から、平成25年度確定申告分から、「国外財産調書」の添付が求められるようになっています。これは、日本の相続税回避が、国外資産や非居住者、外国籍取得などの方法を利用して行われる事態が頻繁にみられるようになってきたための相続税(および贈与税)の改正と呼応しています。
  • つまり、バンコクで所有するコンドミニアム等、一定の金額であり(既述のように現在の情報では1億バーツ)、その所有者である駐在員が死亡したら、タイで相続税が課税され、また、日本でも課税が起こることになります。つまり、ダブルでかかる。
  • ただし、日本の相続対象財産がタイの相続対象財産よりも多い限り、日本での相続税計算上、外国税額控除ができますので、かつ、(日本の相続税率よりも外国での相続税率が高率でない限り)外国税額の全体が控除できますから、実は、二重課税は生じない建前となっています。
  • では、もし、タイの相続対象財産のほうが多い場合はどうか。タイの相続税でのその辺の取り扱いは、まだ、わかっておりません。
  • そもそも、タイの相続税で一番問題となるのは、その評価だと私見します。弊事務所もデュー・デリジェンス業務を依頼されることがありますが、いつも驚くのは、タイの証券取引所に登録されている鑑定人であっても、対象財産の評価が、どうにでもなるところです。

(2) 元歳入局長の財産差し押さえ

  • 45億バーツものVAT不正還付事件に関係したとして更迭された元歳入局長サンティ氏が1億79百万バーツの金を差し押さえたと国家汚職員会が報じられました。
  • 同局長はタクシン追放後、インラック政権時代に歳入局長になった人ですが、タイの歳入局は官僚の中の官僚といわれる組織で、局長の多くが財務省事務次官になるといわれています。タクシン政権時にはスパラット氏という大物局長がおり、歳入局の税務調査もリーズナブルに行われていたと聞きます。ところが、タクシン追放後は、スパラット氏もタクシン一派とみなされ更迭され、歳入局のオフィサーも自己保身に走り、どんな小さな点も妥協しない硬直的な税務調査が行われる傾向が強まっていました。もとより、歳入局の人員自体も調査対象となる企業の数と比較して非常に少ないのに、そのような税務調査の対応となって、税務調査が長期化する傾向も顕著となっています。
  • ここ数年専門家が開催する税務調査セミナーで、税務調査の秘訣は当局と妥協することにあり、といった風潮も、このような事情が背景にあると思われます。
  • 歳入局長OBが顧問又は主催する事務所では、多額の報酬を取る代わりに、あっという間に税務調査を終わらせるといったことも行われていると仄聞しますが(特に上記サンティ氏が局長時代であった時から活発になってきたようです)、このような事務所の活動も今後は難しくなってくるかもしれません。
  • 税務調査は、簡単に終わる場合もありますが、想定もしなかったような思わぬ壁にぶち当たると、とたんに長期化します。最近のオフィサーを説得させるのは年々難しくなってきています。オフィサー事態の質の低下もあるようです。弊事務所の経験でも、どうも減価償却を理解していない節があるオフィサーは、決して稀にみることではありません。そして、オフィサーも自分の身を守るため、マイナス評価を受けるような妥協は納税者としたがらず、税務調査はますます(オフィサーの側から見て)慎重になってきています。
  • 従って、今後、納税者として正当な権利を守るには、税務調査段階でオフィサーを説得するのではなく、オフィサーに賦課決定をさせて、裁判で不服申立する手法が重要となってくるでしょう。そのためには、税務調査の段階でオフィサーが発行する書面、納税者側が署名する陳述書、提出した書類な何かなど、きちんと記録してその後の裁判に備える準備をすることが肝要ではないか、と感じます。
  • 今月号の最高裁判例が、そのよい事例であると思います。

最新法令一覧表

重要法令・ルーリング全訳・解説

最高裁判所判例要旨No.641/2555

仏暦2558年勅令(第584号)

特別経済開発区(Ad Hoc Special Development Zone)に対する税の減免措置を定める勅令

仏暦2558年勅令(第585号)

電子書籍に対する付加価値税の免税措置を定める勅令

仏暦2558年勅令(第587号)

国際貿易会社(International Trading Company)に対する税の減免措置を定める勅令

歳入局ルーリング・ゴーコー 0702/2897号

タイ国内提供で国外使用の付加価値税(VAT)について

歳入局ルーリング・ゴーコー 0702/9813号

BOI奨励事業の利益を超えて配当をした場合の取り扱い

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