タックス・ニュース 第237号 2016年9月号

タックス・ニュース 第237号 2016年9月号

トピックス

SME基準について

リサイクリング(recycling)について

NPAE基準では、包括利益計算書という概念を採用しないので、この「リサイクリング」という論点は、直接にはNPAE基準と関係はしない。しかし、現状のIFRSの混乱をよく表すこと、資産・負債アプローチの論点をよく理解できる論点であるので、ここで言及したい。

リサイクリングは、SFASNo.130で使われている用語と一致させるため組替調整(reclassification adjustment)と呼称されることもあったが(IAS No.1 2011 para93)、現在では、IFRSでも一般的に使われる用語となっている(たとえば、IFRS No.1 BC5.25(b))。

リサイクリングについては、例を挙げて説明するのがわかりやすい。たとえば、A社がB社の株式を所有している場合を考えてみる。

B社の発行済み株式総数は1,000株であり、そのうち、600株を、A社が所有しているとする。そして、2010年1月にB社株式を@100BHT、総額60,000BHTでA社は取得していたとする。2010年の年末のB社株式の公正価値は@110BHTであった。

また、2011年末には@120BHTであったとする。この場合、B社はA社にとって、いわゆる子会社であり、IFRS No.9 (2010)によれば、B社株式は、売買目的保有ではない資本性金融商品であるので、公正価値の変動による評価益を、「その他の包括利益(OCI)」において表示することを選択適用することができ(IFRS No.9(2010) para5.7.5)、A社はこれを選択したとする。

したがって、2010年年末、2011年年末の各期において、各々、@10BHTづつ評価益を「その他の包括利益」に計上した。

つまり、2011年年末のB社株式の貸借対照表上の計上額は、120BHT、総額で72,000BHTである。仮に事情があって2011年末に当該株式を売却したとき(売価は、2011年年末の公正価値@120BHTであったとする)、その表示が問題となる。

元来の取得価格は@100BHTであるから、売価@120BHTとの差額の@20BHT、総額で12,000BHT(@20BHT×600株)は、伝統的会計では、これを売却益として、当期の純損益に表示する。

ただし、上記の仮定で、この12,000BHTの利益は、すでに「その他の包括利益」において計上済みである。

そこで、仮に、この12,000BHTの売却益を当期の純損益に表示したいのであれば、「その他の包括利益」から既計上分を一度控除して、当期の純損益に表示する方法が考えられる。一度、「その他の包括利益」に表示したものを、純損益で再表示することから、この手法を「リサイクリング」と呼ぶのである。

もっとも、IFRS No.9では、公正価値の変動による評価益を、「その他の包括利益」において表示する方法を選択する場合、その選択は「取消不能(irrevocable)」であるとしており、この「リサイクリング」は認められない規定となっている。

一度、「その他の包括利益」に計上した限り、これを取消すことはできない、つまり、控除して、純損益にて再表示するという処理はできない、と規定しているためである。

この「リサイクリング」を認めるか否かについては、2014年現在も「IASBディスカッション・ペーパー『財務報告に関する概念フレームワークの見直し』(Discussion Paper [July 2013]  A Review of Conceptual Framework for Financial Reporting)」の公表などで、議論され続けている大問題である。

そしてIFRS No.9「金融商品」の施行時期が遅れている要因の一つが(2014年現在、発効日は2015年となっている)、この「リサイクリング」問題である。

この論点が、決定的に重要なのは、①「多くの投資家、債権者、財務諸表作成者等が純損益を有用な業績指標とみている(DP2013 para8.19)」ことをIASBも認識している。

よって、現状のIAS No.1においては、純損益(profit or loss)の金額とその他の包括利益の金額を表示するように規定しており(IAS No.1 (2010) para81A)、リサイクリングも是認している(IAS No.1 (2010) para93)。

しかし、この純損益とその他の包括利益の併記やリサイクリングは、既述の①の状況を考えてのIFRSの妥協策であるように見えること。

なぜ、妥協策に見えるかというと、IFRSは資産・負債アプローチを採用している以上、重要なのは、純損益ではなく、包括利益に他ならないと思われること。

さらに、現在に至るまでIFRSは、「純損益」の定義をしていないこと。しかし、収益・費用アプローチによれば、「純損益」概念は極めて重要な指標であるから、包括利益という概念を認めるとしても、その包括利益の中の構成要素として「純損益」を表示したいこと。

そのため、「純損益」を財務業績の指標として意味を持たせるためには、リサイクリングが欠かせないこと。総括すれば、資産・負債アプローチと収益・費用アプローチとの論争であること、であろう。

実際、上記の例題で、B社株式売却益の12,000BHTが「純損益」に含められて表示されないのであれば、当該「純損益」の金額が意味を持たなくなるといっても過言ではない。

偽のタックス・インボイス

歳入局は、ビルディング建設の材料の卸売業者であると見せかけ、タックス・インボイスを販売したギャング一味が逮捕されたと報じています。これは、違法にタックス・インボイスを発行したものと認められますが、歳入局調査によれば、バンコク及び地方に大勢の共犯者がおり、彼らは、十億バーツのVAT申告書を提出していたということです。偽のタックス・インボイスを売ったギャング一味とこれを買った者について、きびしい追跡調査がなされた結果、犯罪が明らかになったということです。

ここで、罰則として、先ず、偽のタックス・インボイスを発行した者に対しては、歳入法典第90/4 (3)条に基づいての刑事罰、つまり、3カ月以上7年以下の懲役及び2,000バーツ以上200,000バーツ以下の罰金、さらに歳入法典第89 (6)条に規定される民事上の加算税、つまり、税額票に基づく税額の2倍を加算税の支払、さらに、歳入法典第89/1条に規定される延滞税が課されることになります。

次に、偽のタックス・インボイスを使用した者に対しては、歳入法典第90/4 (7)条に基づいての刑事罰、つまり、3カ月以上7年以下の懲役及び2,000バーツ以上200,000バーツ以下の罰金、及び歳入法典第89 (7)条に規定される民事上の加算税、つまり、税額の2倍の加算税が課せられます。

タックス・インボイスは、言ってみれば、金券と同様なものです。発行及びその使用には、十分な注意が必要であるし、いざ、懲役刑に服するときには、発行した人(実際に当該偽タックス・インボイスを作った、又は手渡した人。つたとえば、経理担当者)ではなく、発行した会社の取締役(日系企業の大部分は、日本人でしょう)が、その対象者となるのですから(タイ刑訴法83)、本当に気を付けるべきでしょう。

最新法令一覧表

重要法令・ルーリング全訳・解説

仏暦2559年、所得税の免除を定めた歳入法典に基づく勅令(第614号)

外国政府や国際的機関への不動産の売却から得た課税所得に関して、政府機関が所有権の移転の登記を禁じたために登記と所有権の移転が遅延した場合の個人所得税及び印紙税の免税

仏暦2559年、所得税の免除を定めた歳入法典に基づく勅令(第615号)

外然人、法人格のある組合または会社が、安全及び創造的メディア開発基金、文化促進基金、国民文化コンテンポラリーアート及び文化基金、アーカイブス促進基金及び考古学基金に現金又は資産を寄付した場合の免税に関する変更

仏暦2559年、所得税の免除を定めた歳入法典に基づく勅令(第616号)

教育支援者が、公立学校、私学管理法に規定される私立学校(非公式な私立学校は含まない)または私立高等教育機関管理法に規定される私立高等教育機関に2016年1月1日から2018年12月31日までに現金又は資産を寄付した場合の、所得税、付加価値税、特定事業税及び印紙税の免税

歳入局通達第ポー153/2559号

土地、建物、その他建設物又は水上住宅の賃貸借にかかる文書及び請負にかかる文書に対する印紙税の支払

ルーリング第ゴー・コー0702/4334

付加価値税にかかる貸方票の発行について

ルーリング第ゴー・コー0702/4952

減資に伴う資本金の払戻に係る法人所得税

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