タックス・ニュース 第219・220号 2015年3・4月号

タックス・ニュース 第219・220号 2015年3・4月号

トピックス

国際財務報告基準とタイの会計基準

  • タイでは、中小企業が適用すべき会計基準として、NPAE基準(正確には、非公開企業用タイ財務報告基準=TFRS for NPAEs)が規定されている。一方、大企業、タイの上場企業または上場を目指す企業については、PAE基準(公開企業用タイ財務報告基準)が規定されている。この辺は、皆さんご案内のとおり。
  • ところが、IASB(国際会計基準審議会)は2009年に中小企業向け国際財務報告基準(IFRS for SMEs。ここでは「SME基準」と略す)を公表している。そこで、最近、タイで話題となっているのが、中小企業が採用すべき会計基準として、NPAE基準の代わりにSME基準とすべきか、というものである。
  • 2名の日本人がイスラム国で殺害された事件は、記憶に生々しい。日本はイスラムの敵である、殺戮の対象となる、といった言説が流れて、タイに住む日本人も、決して、この後藤さんらの事件とは無関係でいられないかと懸念する向きもあろう。
  • 求められれば自分が助けに行くと外国人特派員協会で嘯いたのは、中田考氏。イスラム国に行こうとした北大生を援助したため、私戦予備・陰謀罪の被疑者その人であった。「嘯いた」と記述したのは、1月当時のマスコミのほとんどの論調を受けての表現である。つまり、彼は、怪しい者、ということだ。
  • 畏友Y君は、灘中高をへて東大(法)を卒業した、いってみれば、受験戦争の典型的な勝利者である。中田氏は、そのY君と大学まで一緒であった(学部は文学部)そうだ。開成や教駒などとは違い灘は1学年の人数が少ない。したがって、同学年であればよく承知する間柄といってよいだろう。ちなみに前のバンコクのJETRO出向者も、同期である。灘出身者の大部分は現役で大学に入るので、大学も同期となる。
  • 中田氏は、それほど熱心に勉強している方ではなかったという。そして、現役でⅢ類に行ったのは、ある意味で変わった人かもしれない。しかし、いわゆる怪しい人物というイメージとは、大違いではないだろうか。
  • そもそも、イスラム国がテロの悪玉ということになっているが、考えてみると、なぜなのか、子供に問われてもうまく説明はできない。一方、フセイン大統領下のイラクは、大量化学兵器を所有しているというかどで、責められたのだが、見つかったという話も聞かないし、いったい、米国兵士の戦死者の公表数値は聞いたことがあるが、イラク人、恐らく多数の民間人も含まれるであろうが、その数は仄聞しない。
  • イスラム国が正しいか、中田氏が立派であるかは、わからない。そんな大問題は我が掌中には到底おさまらないのである。ただ、情報によって事柄は左右されることは確かのようである。
  • IFRSに関する情報も、イスラム圏に係る情報と変わりはない。世間に出回る書物も、ネットで検索できる情報も、IFRSに与(くみ)するものによる発信なのかどうかで、その内容は大きく違う。
  • IFRSは、多方面からの拠出金で賄われている組織であるが、その31%を、大規模会計事務所が占めている(2013年度)。以下にEU(16%)、日本(10%)、米国(5%)、英国(4%)、ドイツ(4%)と続く。
  • 実際、2012年公表の米国SECスタッフ報告書では、大手会計事務所からの資金調達に継続的に依存していることに懸念しているとされる(IFRS財団報告書)。これら大手会計事務所は、IFRS財団の第一のパトロンであれば、IFRSの基準が、彼らの意向に沿う傾向が出ても仕方のないことであろう。畢竟、これら会計事務所に属する会計士が行う説明も、その線になるのは自明である。
  • 我が日本公認会計士協会は、IFRS礼賛である。以前は、大手会計事務所と独立個人事務所とから、たすき掛けの体裁で会計士協会会長が選出されていたが、ここ20年ほど、大手会計事務所からのだけの選出となっていることと関係があるかもしれない。
  • たとえば、次の記事がその例である。「FRSは、2005年から欧州連合(EU)加盟国を中心に採用されたのを皮切りに、今では世界100以上の国や地域で採用されています。(IFRSを巡る世界と日本の動向 EY 2014年)」 「IFRSを自国の会計基準として適用している国および適用することを認めている国はすでに120ヶ国に及んでいます。中国、インドネシア、インド、米国、日本を除くすべてのG20加盟国の公開企業ではすでにIFRSが強制適用されています。(国際財務報告基準 「世界の動向」KPMG 2014nen )」
  • 一方で、IASBのエグゼクティブ・テクニカル・ディレクターHugh Shields氏によれば「IFRSはすでに欧州以外の世界中の国々で使われているという点も忘れてはいけません(欧州におけるIFRS適用 会計監査ジャーナル2014年11月号)」。
  • 一般の読者は、ヨーロッパでIFRSが使われているのかどうか、以上からは混乱するのが普通である。もちろん、「カーブアウト」とか「エンドースメント」といった用語を知っているものであれば、ある程度の理解はできるかもしれない。
  • ここタイでのNPAE基準かSME基準という議論も、既述の状況を反映していると察する。SME基準は、いくら簡略化されたとはいえ、公正価値会計をいう根本理念を崩壊している点で、IFRS―国際財務報告基準と同じである。そして、SME基準の2012年意見募集に始まる包括的改正でも理解されるように、それは、ムービング・ターゲットなのである。常に動くのでさ定まりがたい標的である。
  • 仮に、SME基準が採用されれば、日本の上場企業のタイ子会社は、一見、連結上、便利になると思われるだろうが、実際の適用となると、簡単ではない。日本親会社を見ればお分かりであろう。
  • また、タイの法人所得税の規定とは、よほどかけ離れる体裁となるため、税金会計のタイ系を別個持つ必要も出てくると怪しまれる。この先はいまだ不明のままである。

最新法令一覧表

重要法令・ルーリング全訳・解説

最高裁判所判決要旨No.2546 /2557号

試用期間中の即時解雇及び労働裁判における最高裁への上告理由

仏歴2557年勅令(第580号)

研修にかかる費用の法人所得税免除

商務省通達第13/2558号

組合並びに会社が設立及び増資登記を行うための規則及び証拠書類

社会保障事務所通達第ロー・コー0604/26794号

書類の確認

社会保障事務所通達第ロー・コー0627/00926号

外国人がタイに一時滞在するための申請にかかる書類の確認

所得税に関する歳入局長通達第251号

タイ国内における従業員のために支払った研修費の会社又は法人格を有する組合の所得税免税に関する規則、手続の規定

歳入局通達第ポー148/2557号

会社及び法人格を有する組合の益金及び損金の計算にかかる発生主義の適用

歳入局ルーリング No.0702/1121

従業員への電話代及び旅費の支給に対する源泉徴収税

歳入局ルーリング No.0702/3540

関係会社のための保証料に係る特定事業税の課税

歳入局ルーリング No.0702/8746

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