会計監査サービス
タイの民商法典において、すべての株式会社はタイ国の公認会計士の監査が求められております(商法監査)。さらに、歳入法典の規定により、法人所得税を申告する者、つまり、株式会社だけでなく、駐在員事務所や恒久的施設(支店等)も、タイ国の公認会計士の監査が要件とされています。(税法監査)
日本の有価証券行政において平成11年以降の連結財務諸表制度が抜本的に変革されました。50%以下の持ち株比率であっても支配力基準により連結子会社と判定されるので、タイの日系企業の多くは、日本の親会社からみて、連結決算上の子会社又は関連会社と認められることになるでしょう。つまり、日本の連結用の財務諸表を作成し、会計監査人(一般にはタイの公認会計士)の監査証明が必要となります。
さらに、在外子会社の会計方針統一といった(不思議な)規則が施行されております(企業会計基準委員会 実務対応報告第18号)。これに対応する際には、タイの子会社等は、国際会計基準に従うべきものとされます。米国基準での作成は、現状なじまないためです。さて、この国際会計基準とタイの会計基準、加えて、日本基準を理解している専門家は、本当のところ、誰もいないと怪しみます。しかし、タイの監査人に対しては、当該タイの監査に関し、日本の親会社の連結財務諸表に係る会計監査人(日本の公認会計士又は監査法人)からみて、信頼性があり、意思疎通も容易いことが、最低限には、求められるでしょう。
加えて、「四半期報告書制度」、パンドラの箱といってよい「日本版J-SOXの在外子会社への適用」も考えなくてはなりません。
もっとも、これらの事柄は、日本の上場企業を親会社とするタイの現地法人ではない限り、先ず、問題とならないことではありましょう。
しかし、タイの恒常的な経理マン不足からして、本当に決算があっているのか?また、税務処理は基本的なところで間違ってはいないか?さらに、社内不正はないだろうか?といった不安を持っている日系企業は、少なくないと承知します。
タイでは、すべての会社が会計士監査を求められる体裁であるため、タイ人会計士の中には、いわゆる「めくらサイン」またはこれに準じた監査を行う者も少なくないと仄聞します。そして、その報酬も安いところは5千バーツからだ、と聞きます。我々は、そのような実務を簡単に軽蔑するものではありません。それなりの意義があると察します。しかし、制度上あるから仕方がない、とにかく適正意見の監査報告書が欲しい、といって監査人を依頼する企業ばかりではないはずです。そうした企業に対して、意味のある監査を行っていきたいと考えています。
さもなければ、会計士というレーゾンデートルが認められなくなると心配です。ただでさえ、最近のこの業界の流れが、日本国公認会計士やタイ国公認会計士といった資格制度がなくなる方向にあるからです。もっとも、なくなった方がよいのかもしれませんけれども。
弊事務所の監査の特徴
- いかに難しい会計処理であっても、的確な回答が得られるほどの有能な人材を有していること。恒久的施設の会計処理、外貨予約の会計処理、赤字が続く企業における減損や税効果会計にかかる判断の仕方、清算中の会計処理、(国際会計基準あるいはタイ基準における)連結の仕方、といった事柄について、的確に知識を有している事務所は、数少ないものであり、然るに、弊事務所は、その一つであると確信しています。この弊事務所の特質は、日本人経営者だけではなく、企業経理に携わるタイ人スタッフにとっても、有益であると考えます。また、各種デューデリジェンスの業務においても、知識不足の心配はありません。
- 会計監査に関しても、高い水準の技術を持っており、かつ、適正な(監査業務の)品質管理が行われています。タイでは、現在の日本がそうであるように、上場企業の監査に対しては、特別なライセンスが求められます。弊事務所は、現在これを申請中であり、近々(2009年5月を目処)、このライセンスを取得する予定です。内部的にいえば、3名のパートナー会計士からなる品質管理目的のレビュー体制がとられています。
- 日本語対応が可能であること。他の国の制度を日本語で通訳することは、実は、大変に困難なことです。専門用語は、その国の制度に立脚しているからです。日本語の情報に頼ると、かえって、まちがった情報を得る可能性が強いとも指摘されましょう。しかし、やはり、便利である点は否めません。弊事務所では、求めに応じて、(日本の制度に準拠する体裁で)邦語訳の財務諸表を作成したり、また、監査結果についての説明をしております。
- 内部統制の評価を標準的な監査手続きとして有していること。これは、上場企業や大規模企業にとっては当然のことでしょうが、企業の内部統制の評価を、毎年行っております。結果として、企業内不正が見つかる場合もしばしばですが、私どもの監査は、不正を摘発する意図ではないことをご理解ください。
- 税務上の基本的な間違いについて、これを検証する手続きを有していること。弊事務所では、必ず、企業の作成するVAT申告書と企業会計上の数値との調整吟味を行っております。また、毎月の源泉徴収税と企業会計上の数値との調整吟味も行うのが標準的手続きです。監査スタッフは、社内外のトレーニングで、税務についても基本的な知識を有する程度に訓練されております。ただ、「基本的」と称しているところに、留意してください。例えば、複雑な事実認定に係る的確な税務処理については、タイで、監査スタッフは専門家として期待されるものではないところから、不案内であると承知してください。なお、明らかな税務処理の失敗があって、将来、租税債務を有する可能性が50%を超えていれば、偶発損失として認識すべきであるというのが、弊事務所の見解です。つまり、監査と税務債務とは無関係とは言い切れない、と考えています。
- 監査期限に間に合うような態勢を勘案しております。予め、企業から期限を設定していただければ、これを遵守するように、計画を策定します。弊事務所の監査チームにおいては、繁忙期には、殆ど徹夜となることも、稀ではありません。つまり、クライアントへの往査をしたあとで、事務所に戻って業務をすることが、しばしばです。ともかく、期限がある業務に従事する専門家ですので、これは、仕方のないことだと考えています。無論、米国企業の子会社の期限の方を、日系企業の子会社よりも重視するといった風潮は、弊事務所には、ありません。
- 報酬は、比較的高くはないこと。大手の国際的事務所に比べれば、そのインターナショナル組織の加盟料やロイヤリティーがないこと、高額な日本人報酬がないこと、接待費といったPD活動に係る費用がないこと、から、廉価であると思います。一方、いわゆるローカル事務所よりは、大分高いともいえます。
- いわゆるリスクアプローチにたよって監査手続きが行われるものではないこと。これは、多少専門的な話しになりますが、ここ20年来、監査人の責任を問われることなく、いかに監査の収益性を上げるか、という要請で、リスク・アプローチという手法が、広く開発されてきました。既述の要請は、一般的には「品質を損なわずに能率を上げるため」と説明されております。その結果、少人数で数日しか会社に往査にこないのに、驚くような報酬を請求されるということがタイでも起きています。あとで、大きな租税債務が発覚して、会計監査で本当に分からなかったのかと怪訝に思っても、監査事務所の発行する書面には、すべて、コピーはだめ、他の者に開陳してはだめ、といった外資系特有の縛りが効いていて、他の誰にも相談できないといった、馬鹿らしい実務が有るような気がしてなりません。
- 連結パッケージやインストラクション作成にも十分慣れていること。 日本の親会社が上場している場合、その連結のための資料作成についても、熟練しております。現状、約30社の連結資料を担当しております