タックス・ニュース 第236号 2016年8月号

タックス・ニュース 第236号 2016年8月号

トピックス

仏暦2559 (2017) 年 個人所得税計算方法の変更

月額26,000(訳者注、計算上は25,834)バーツを超えない給与所得は、仏暦2560 (2017) 年度(仏暦2561(2018)年申告分)より免税となる。

[要約]

  1. 従来30%の税率であった所得に対する税率を35%に変更する。
  2. 新個人所得税率表
    純所得 個人所得税率
    0 – 150,000バーツ 免税
    150,001 – 300,000バーツ 5%
    300,001 – 500,000バーツ 10%
    500,001 – 750,000バーツ 15%
    750,001 – 1,000,000バーツ 20%
    1,000,001 – 2,000,000バーツ 25%
    2,000,001 – 5,000,000バーツ 30%
    5,000,001バーツ以上 35%
  3. 基礎控除を増額する。
  4. 基礎控除額を所得の50%、但し、100,000バーツを超えない額とする(従来は、所得の40%で60,000バーツを超えない額)。

  5. その他の控除額を以下のように増額する。
    • 本人控除額を60,000バーツとする(従来は30,000バーツ)。
    • 配偶者控除額を60,000バーツとする(従来は30,000バーツ)。
    • 子供控除額を一人当たり30,000バーツかつ子供の人数制限なしとする(従来は一人当たり15,000バーツで3人までの人数制限あり)。

[新旧対照表]

変更点
150,000バーツまでは免税 150,000バーツまでは免税
基礎控除額60,000バーツ 基礎控除額100,000バーツ
本人控除額30,000バーツ 本人控除額60,000バーツ
20,000バーツ(単月) 以下の給与所得者は免税 25,834バーツ(単月) 以下の給与所得者は免税
所得税率
0 – 150,000バーツ 免税 0 – 150,000バーツ 免税
150,001 – 300,000バーツ 5% 150,001 – 300,000バーツ 5%
300,001 – 500,000バーツ 10% 300,001 – 500,000バーツ 10%
500,001 – 750,000バーツ 15% 500,001 – 750,000バーツ 15%
750,001 – 1,000,000バーツ 20% 750,001 – 1,000,000バーツ 20%
1,000,001 – 2,000,000バーツ 25% 1,000,001 – 2,000,000バーツ 25%
2,000,001 – 4,000,000バーツ 30% 2,000,001 – 5,000,000バーツ 30%
> 4,000,000バーツ 35% > 5,000,000バーツ 35%
本人控除額
30,000バーツ控除可 60,000バーツ控除可
配偶者控除額
30,000バーツ控除可 60,000バーツ控除可
子供控除額
一人当たり15,000バーツ
3人までの人数制限あり
一人当たり30,000バーツ
子供の人数制限なし
教育費控除額
子供一人当たり2,000バーツ 控除不可

[解説]

2016年4月19日に歳入局のウェブサイトに公表された2017年の申告分から適用される個人所得税計算方法の概要です。各種の控除額が増額され、また、最高税率35%が適用される所得が従来より百万バーツ増額される等、個人所得税が減税されることになります。追って正式なルールが公表されることになると思われますので、その際に改めてタックス・ニュースでご紹介いたします。

SME基準について~その2

  • 包括利益計算書について
    • タイで現在適用されている会計基準のうち、いわゆる上場企業ではない企業に適用されるNPAE基準と、今度新しく適用が予定されるSME基準との違いを、なるべく具体的に説明していきたいと思います。何から説明していくのが、一番わかりやすいのかをいろいろ考えたのですが、まずは、「包括利益計算書(the statement of comprehensive income)」から、始めることにします。
    • 前回、お話ししたように、SME基準は、公正価値会計であること、貸借対照表(BS)中心の会計であることに、大きな特徴を持つものです。これらの特徴は、財務報告書の目的を達成するために不可欠である、と考えられています。その財務報告書の目的とは、(主に)投資家に対して、その意思決定に有用な情報を与えることであるとされています。
    • 典型例を以っていえば、ある投資家が、A社の株式を購入するかしないか、その意思決定に役立つ情報は、取得原価主義で作成された財務諸表よりも、公正価値会計で作成された財務諸表から得ることができる、さらに、財務諸表の中でも、この意思決定には、損益計算書よりも貸借対照表のほうが、役に立つ情報を提供する、と(国際財務報告基準の世界では)考えられているのです。
    • 重要なところですから、くどいようですが、もう少し説明しましょう。投資家にとって、これから投資しようとする企業について考えるとき、その企業が今までいくいらの利益を稼いできたかというよりは、現在、本当のところ、いくらの財産を持っているのか(10年前に買った土地の金額が、あるいは、去年、同じ企業グループであるということで割り当てられて購入することになった関係会社の株式の金額が、そのまま、貸借対照表に計上されているのでは、つまり、取得原価主義で計上されているのでは、検討するときに役立たない)、どれだけの負債を持っているのか(従業員の退職金といった未確定な債務も含めて考えたい)という情報こそが一番知りたい情報である、という前提に立った会計基準、これが、IFRSの本質である、と言えるかと思います。
    • このSME基準の特徴は、NPAE基準と比較すると、さらに理解しやすい。NPAE基準では、財務諸表の利用者として、経営者、つまり、財務諸表の作成者自身も挙げております。そして、財務諸表の目的は、会計主体(企業といってよい)を取り巻く様々な利害を調整すること(to reconcile conflict of interest)ができるような適正な期間利益を計算すること、とされていました。この考え方の中では、財務諸表で重要なのは、貸借対照表よりも、むしろ、損益計算書である、ということは、すぐにお分かりいただけることと思います。
    • NPAE基準の採用する取得原価主義会計をもう少し考えてみます。取得原価主義の意味合いについては、いろいろ言えるとは思いますが、一つは、評価益を許さない、という点にあると言えます。昔、10万バーツで買った土地が、今の時価では100万バーツであるとします。この評価益、つまり、100万バーツー10万バーツ=90万バーツは、実際に売却していませんから、依然として、土地は、買った時の価額、10万バーツで計上される、これが取得原価主義です。つまり、収益は、これが実現して初めて計上されるべき、という実現主義と、この取得原価主義とは、コインの裏表のような関係にあるものです。この結果、計算される利益は、評価益のような未実現の利益(金銭の裏付けがない利益)を排除したものですから、分配することができる利益金額です。ですから、配当可能利益として利用することもできるでしょうし、課税所得として利用することもできます。まさに、取得原価主義+実現主義という会計構造で計算される利益は、株主という利害関係者を満足させて、対立する利害を解消させる機能、及び、課税当局との利害を解消する機能を持っていることが分かるかと思います。
    • 以前の会計基準では、過年度損益という概念がありました。この過年度損益以外は、利益は、当期(純)利益ということです。そして、取得原価主義おと実現利益の枠組みにおいては、利益は、「当期の収益」-「当期の費用」=「当期の利益」というように計算されます。これはそのまま、損益計算書の構造です。一方、利益を貸借対照表から計算することもできます。資産から負債を差し引いた部分を純資産と呼ぶことがあります。つまり、当期利益は、当期中に生じた純資産の増加、つまり、「期末純資産」―「期首純資産」=「当期利益」、と計算することもできます。もちろん、増資によって純資産が増加する場合は別となります。以前よく言われた「資本取引と損益取引の区別」が大切な所以です。
    • ここで重要なことは、損益計算書で計算された当期利益が、貸借対照表の純資産の増加と一致する(これを最近は、クリーン・サープラス関係 CLEAN SURPLUS RELATION 純資産のうち、資本金以外の部分を剰余金Surplusと呼ぶことがあるが、この剰余金は、損益計算書で計算された損益だけで構成されているのでCleanである、といった意味)だけではなく、その順番です。つまり、当期利益は、まず損益計算書で計算され、その後に、貸借対照表に付け替えられる、という①PL、②BSという順番が前提として考えられている点です。
    • まとめますと、企業を取り巻く利害関係者がもつ、当該企業に対する利害を調整するための利益(これを「真実の利益」と呼ぶことがあります)は、配当や納税といったことを考えても、分配することができる利益でなくてはならない、この分配可能利益は、取得原価主義+実現主義の枠組の中で、損益計算書によって計算され、その計算結果である当期利益は、貸借対照表に剰余金として付け替えられて表示される、ここに、「包括利益」という概念が登場する機会は全くありません。ところが、SME基準では、Full IFRSと同様、包括利益計算書を求めている、それはどういうことか、実際の会計処理でどんな違いが出てくることになるのか、といった事柄は、次回以降ということで。

最新法令一覧表

重要法令・ルーリング全訳・解説

仏暦2559年、特定事業税が免税となる事業の指定について定める歳入法典に基づく勅令(第609号)

特定事業税の免税が廃止される事業について定めた勅令

仏暦2559年、免税を定める歳入法典に基づく勅令(第610号)

タイ金融商品取引法に基づいて設立された不動産投資のミューチュアルファンド、金融機関の問題を解決するための不動産投資のミューチュアルファンド、金融機関の問題を解決するためのミューチュアルファンド及び不動産及び債権のミューチュアルファンドにかかる印紙税免除の廃止

仏暦2559年、免税を定める歳入法典に基づく勅令 (第611号)

会社又は法人格を有する組合が、その従業員にセミナーを行う場合、セミナー会場料、輸送料、その他関連費用で、旅行業者又はセミナーのコーディネーターに支払うものは、その費用の100%に相当する金額が益金から免除される勅令

仏暦2559年、所得税の免税を定める歳入法典に基づく勅令(第612号)

仏暦2558(2015)年国際統括事務所の所得税の免税を定める歳入法典に基づく勅令(第586号)に関連して発行される国際統括事務所が関連会社に貸付を行った際の利息収入に係る特定事業税の免税措置

仏暦2559年、付加価値税の免除を定めた歳入法典に基づく勅令(第613号)

研究、開発または性能テストのために輸入するプロトタイプの自動車またはモーターバイクの輸入に係る付加価値税の免税措置

所得税の免税に関する歳入法典に基づく財務省令第314号 (仏暦2559年)

国民年金基金法に基づく所得について、財務省令第126号 (仏暦2509年)第2項(90)及び(91)を追加する件

所得税の免税に関する歳入法典に基づく財務省令第315号 (仏暦2559年)

2016年4月9日から17日の間に15,000バーツ以下で、国内の飲食費、宿泊費及び旅費に支出された課税所得の免税

所得税の免税に関する歳入法典に基づく財務省令第316号 (仏暦2559年)

旅行代理業法に基づく旅行代理店やガイドへ実際の支出または国内旅行宿泊業法に基づく宿泊施設に実際の支出で15,000バーツを超えない金額に係る個人所得税の免税措置

所得税に係る歳入局長通達(第253号)

国際地域統括本部(International Headquarters)を営む会社に対するの個人所得税率の低減、法人税及び特定事業税の免税を定める規則、手続及び条件

歳入局ルーリング 第ゴーコー0702 / 687 号

販売促進費の損金性

歳入局ルーリング 第ゴーコー0702 / 4780 号

塗装ライン据付にかかる請負に対する法人税、付加価値税及び源泉徴収税

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